不動産ミニ知識

不動産の概略価格を知るにはどうのような方法があるのですか?

不動産の買受けにあたっては、まず権利関係や物的状況を調べ、それが確定すると、次はその物件の適正な価格について調べることとなります。
不動産の適正な価格を知るためには、不動産鑑定士に頼むのが一番確実ですが、それほどの正確さは必要なく、大体の価格水準がわかればよい場合が多いでしょう。そのような概略価格の調査方法について説明しましょう。
概略価格を知るために、公的評価による価格を参考にできます。土地については公示価格、路線価、固定資産税評価額、建物については固定資産税評価額があります。

公的土地評価にはどのようなものがあるのですか?

公的土地評価には、公示価格、路線価、固定資産税評価額の三つがあり、それぞれ所管官庁が異なります。
これら三つの価格は、通常、公示価格を100とした場合、路線価はその80%、固定資産税評価額はその70%を目安にしており、公示価格を中心に各価格相互間の均衡と適正化が図られています。
公示価格と路線価は毎年評価を行いますが、固定資産税評価額の評価は3年に一度行い、これを評価替えといいます。平成27年の次は平成30年に評価替えが行われます。

公示価格とはどの価格を言うのですか?

一般に公示価格といわれるものは、正確には二つに区分されます。一つは国土交通省が行っている地価公示による価格であり、もう一つは都道府県が行っている地価調査による価格です(図表-1参照)。
この二つは調査時点が違いますが、実質的には同じ性格なので、一括して(広義の)公示価格といわれます。
公示価格は、地価公示制度にもとづき、適正な土地価格を公示することにより一般の土地取引に対して指標を与え、地価形成の適正化に寄与するものです。調査にあたっては不動産鑑定士に鑑定評価を求め、審査調整を行って価格を判定し、これを公示します。都道府県の地価調査価格もほぼ同様の手続きです。
公示価格は官報(地価公示)または都道府県広報(地価調査)で公示され、また、「土地総合情報システム」のホームページで見ることができます。
次に、地価公示価格の記載例を掲げます。

図表-1 公示価格の種類
  地価公示 地価調査
実施主体 国土交通省・土地鑑定委員会 都道府県
調査地の名称 標準地 基準地
調査時点 1月1日 7月1日
対象地域 公示区域 都道府県全域
発表時期 3月下旬 9月下旬

不動産鑑定士とはどのような資格ですか?

適正な地価形成を図ることを目的に昭和39年に不動産鑑定評価制度が設けられ、鑑定評価を行う専門的な資格者として不動産鑑定士の制度ができました。
不動産鑑定士とは、不動産(土地・建物)の客観的かつ適正な価格を公正な立場から定める専門資格者であり、不動産価格を評価した鑑定評価書という書類を独占的に発行します。
また、地価公示価格および都道府県地価調査価格は、不動産鑑定士の鑑定評価をもとにし、固定資産税評価額および路線価の決定にあたっても、不動産鑑定士の意見を参考としています。
不動産の適正な価格を知りたいときは、不動産鑑定士に依頼するのが一番確実な方法です。概略の土地価格を知るためには、公的評価による価格を目安として利用できますが、個々の土地は形状、道路接面関係等に個別性が強いため、厳密な価格を知るためには、鑑定評価書を利用するほうがよいでしょう。
不動産鑑定業者の登録制度は、宅建業者とほぼ同じです。二つ以上の都道府県に事務所を持っている場合は国土交通大臣登録、一つの都道府県内の場合は知事登録となりますが、その信用度に差はありません。

鑑定評価の方式にはどのようなものがあるのですか?

鑑定評価による価格を求める方式には、比較方式(取引事例比較法)、原価方式(原価法)、収益方式(収益還元法)の三つがあります。
(1)比較方式
評価する不動産を、類似する不動産と比較して価格を求める方式です。土地については、周辺での土地取引の実例(取引事例という)をもとに、それと比較検討して価格を試算します。
(2)原価方式
評価する不動産にコスト面からアプローチして価格を求める方式で、土地については、宅地造成による分譲地の場合などに適用します。実際によく使われるのは、建物評価の場合で、その具体的な過程は次のとおりです。
まず、評価対象建物を現在新築するとした場合の再調達原価を求め、次に、時の経過による物理的・経済的・機能的減価を判定して減価修正を行い、対象建物の現時点での価格を試算します。
(3)収益方式
評価する不動産の収益性(賃貸物件であれば賃料収入)に着目して、収益を生み出す元本としての価格を試算します。
平成14年の鑑定評価基準の改正により、従来からの手法である直接還元法に加えて、DCF法を適宜適用することとしました。
鑑定評価にあたっては、これら3方式のすべてを適用することが原則ですが、古くからの市街地内の土地について原価方式は適用できませんし、もともと賃貸を目的としていないマイホームには収益方式の適用は困難です。このように不動産の種類により、各方式の適用の是非および適用精度に一長一短があるので、最終的に各試算価格を調整して鑑定評価額を決定します

不動産の最有効使用とはどのようなことを言うのですか?

不動産鑑定における重要な概念に、最有効使用があります。最有効使用とは、不動産をもっとも有効に利用する方法のことです。
例で説明しましょう。東京丸の内の1,000㎡の土地の最有効使用は、高層のオフィスビルを建築することであり、木造2階建のアパートはナンセンスです。
この土地を買うにあたって、低収益しか得られないアパート建築計画者は、それに見合った低い価格しか提示できず、結果として高価格を提示できるオフィスビル計画者が、この土地を手に入れることになります。
不動産の価格は、その土地の最有効使用にもとづいて決定され、最有効使用をどう考えるかが、不動産価格に大きな影響を与えます。ですから、鑑定評価にあたっては、対象不動産の最有効使用の判定が重要となります。
最有効使用の判定により、不動産の価格は大きく変わります。たとえば山の場合に、その最有効使用を、木を植えるだけの普通の山として考えるか、それとも開発をして住宅地にする開発可能な山として考えるかによって、鑑定評価額は大きく異なります。

建物を建てる際の接道義務とはどのような義務を言うのですか?

都市計画区域内において建物を建築する場合、建築物の敷地が道路に原則2m以上接していなければなりません。建築基準法第43条に規定されているこの義務のことを「接道義務」といいます。
この場合の「道路」とは同法第42条1項から5号までに規定される国道・都道府県道・市区町村道やいわゆる位置指定道路などであります。
43条の規定は災害時における避難経路の確保(安全上)、緊急車両の経路の確保(防火上)、通風、排水の確保(衛生上)等を目的とするものであります。また、特別な扱いとして敷地の周囲に(道路以外の)広い空地(河川、公園等)があり、交通上、安全上、防火上、衛生上支障がないと認められる場合には、上記接道義務を満たしていなくとも建築が認められる場合もあります。
一方、建築する建物の階層が3階以上の場合や特殊建築物(アパート、マンション等)の場合には、条例により4m以上の接道義務を求められる場合もあり注意が必要です。
一般的に土地を売買する場合、購入者はその土地に建物を建築することが目的ですので、不動産の鑑定評価を行う上でこの接道義務は非常に重要な問題のひとつであり、道路接面部分(間口)が1.5mの土地と2mの土地では、評価額に大きな違いが生じる場合があります。

建築基準法上の「道路」とはどのような道路を言うのですか?

建築基準法第42条は、道路の用件を定めており、そこで認められる道路は、以下のとおりです。

  • (1)道路法による道路で、幅員が4m以上のもの(国道、県道、市町村道など、法42条1項1号)
  • (2)開発許可を受けた宅地造成や土地区画整理事業等による道路で、幅員が4m以上のもの(法42条1項2号)
  • (3)建築基準法が施行されたとき(昭和25年11月23日。ただし、その後に都市計画区域に指定された区域では、その指定の日)に、すでにあった道路で、幅員が4m以上のもの(法42条1項3号、既存道路という)
  • (4)都市計画事業として2年以内に整備されるものとして特定行政庁が指定したもので、幅員が4m以上のもの(法42条1項4号、計画道路という)
  • (5)特定行政庁から道路位置の指定を受けた幅員が4m以上の私道(法42条1項5号、位置指定道路という)
  • (6)建築基準法が施行されたとき(昭和25年11月23日。ただし、その後の都市計画区域に指定された区域では、その指定の日)に、すでに建物が建ち並んでいた道路で、幅員が4m未満のもので特定行政庁が指定したもの(法42条2項、2項道路、みなし道路という)

特定行政庁とは建築基準法特有の言葉で、建築行政を管掌する行政機関のことをいいます。建築主事のいる市町村はその長、その他の市町村の区域については都道府県知事がそれにあたります。

不動産投資信託とはどのようなものですか?

投資信託とは、多数の投資家から集めた資金をプールし、複数の運用先に分散投資し、その運用益を投資家に分配するものです。不動産投資信託は、運用先を不動産とし、投資不動産からの賃貸収益や売却益などを投資家に分配する投資商品で、大きく分けて、不動産に投資する法人を設立する会社型と、信託銀行が管理運用する信託型の2種類があります。

不動産の競売手続はどのように進むのですか?

  • (1)競売は、融資の返済ができなくなった債務者等の不動産を、債権者の申立てにより裁判所が差し押さえ、入札などの方法で売却する手続きです。
  • (2)入札希望者は裁判所内の執行官室で入札用紙をもらい、必要事項を記入します。入札用紙は直接執行官に提出してもよいし、書留による郵送でもかまいません。
    期間入札の内容は、裁判所が行う公告により知ることができます。この公告は、入札期間開始日の2週間前までに裁判所に掲示され、ホームページに概要を掲載しております。
    競売の買受価額は、従来は最低売却価額以上の金額でなければなりませんでしたが、平成17年4月以降は、売却基準価額(従来の最低売却価額と同水準)から2割低い買受可能価額を定め、それ以上の額であればよいことになっております。
  • (3)売却される不動産について、物件明細書・現況調査報告書・評価書という三つの書類(よく、3点セットといわれる)が裁判所に備え置かれます。
  • (4)競売では、通常の売買より安い価格で売却されるケースが多いのですが、それにはそれなりの理由があります。
  • (5)不動産を第三者が占有しているケースも多く、占有権限が買受人に対抗できる場合には立ち退いてもらえず、また、対抗できない場合でも容易に立ち退かないこともあります。
    このように、競売不動産は、購入してもすぐに買受人が使えるとは限りません。また、裁判所は物件の内容を保証してくれるわけではなく、あくまでも手続きを行うだけです。
  • (6)このような種々の理由により、競売物件の価格は、その物件が一般市場で売りに出された場合の価格より数十パーセント低いのが通例です。競売物件が本当にお買い得なのかどうかは、3点セットを閲覧したりして、買い受ける人間が自分で判断するしかありません。

文化財保護法による規制とはどのような内容ですか?

  • (1)埋蔵文化財包蔵地とは、貝づか、古墳といった外観上明らかに埋蔵文化財であると判明している場合もありますが、住居跡(堅穴住居跡、寺跡等)などは地下に埋もれているものも多いのが現状です。
  • (2)埋蔵文化財は、文化財保護法(以下、文化財法という)で保護されており、この法律によって一定の制限が規定されています。
  • (3)文化財が埋まっていることが知られている土地を、「周知の埋蔵文化財包蔵地」といいます。埋蔵文化財包蔵地や近くに遺跡があり、地下に文化財が埋まっている可能性があるところでは、建物建築および土木工事の届出をし、調査のための試堀を行わなければなりません(法92条以下)。
    この調査が必要な区域かどうかは、教育委員会等で調べます。調査には時間がかかり、その費用は申請者が負担する取扱いが多く開発にあたって影響が大きい実務的に重要な規制です。
  • (4)埋蔵文化財包蔵地は、各市町村の教育委員会の担当部署に「遺跡台帳及び遺跡分布地図」が備え置かれており、その地図を閲覧することにより判断することができます。
    山形県のホームページに山形県遺跡図として見ることができるようになっておりますので、ご参照下さい。なお、「遺跡台帳及び遺跡分布地図」は、文化財保護委員会が文化庁の補助事業として全国の遺跡分布調査を行ってまとめたものです。

調停とはどのような制度ですか?

  • (1)民事上の争いの解決のため、調停委員会の仲介によって、当事者が互いに譲歩して、紛争解決の合意をすることをいいます。訴訟によらず当事者の自由な意思によって争いを解決するという点では和解と類似しますが、裁判官が主任となる調停委員会が仲介にあたったり、裁判所・調停委員会からの呼び出しに対して正当な事由がなく出頭しないときは5万円以下の過料の制裁を受けたりする点で異なります。
  • (2)調停において当事者間に合意が成立した場合、これを調書に記載したときに調停が成立したことになります。調書の記載は裁判上の和解と同一の効力を有し、その結果、確定判決と同一の効力を有することになります。
  • (3)借地借家法上、地代の増減についてはいきなり裁判を提起することはできず、必ず最初に調停の申し立てをすることになります(調停前置主義)。調停の中で当事者が合意できれば、その金額が新たな地代となります。

土壌汚染対策法による規制とはどのような内容ですか?

  • (1)土壌汚染とは、土壌が人間にとって有害な物質によって汚染された状態をいいます。
    土壌汚染に関する問題は、土壌に含まれる有害な物質が私たちの体の中に入ってしまう経路が存在していることです。経路を遮断するような対策を取れば、土壌汚染による健康リスクを減らすことができます。
  • (2)一定の場合、土壌汚染対策法に基づき「土壌汚染状況調査」が必要になります。
  • (3)「土壌汚染状況調査」によって土壌の汚染状態が指定基準を超過した場合、「①要措置区域」「②形質変更時要届出区域」の指定がなされます。
  • (4)要措置区域等が指定された場合、都道府県知事等は、それぞれの区域の情報が記載された台帳を作成し、管理することになります。
    山形県のホームページ(山形市は山形市のホームページ)で指定状況を見ることができるようになっておりますので、ご参照ください。
    山形県:http://www.pref.yamagata.jp/kurashi/kankyo/dojo/
    山形市:https://www.city.yamagata-yamagata.lg.jp/jigyosya/sub2/jigyokankyo/ccd9bsiteikuiki.html

アスベストとはどのようなものですか?

  • (1)土石綿(アスベスト)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。
    その繊維が極めて細いため、飛散しやすい吹き付け石綿などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が吸入してしまうおそれがあります。
    以前はビル等の建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていましたが、昭和50年に原則禁止されました。その後も、建設資材としてのスレート材、防音材、断熱材、保温材などで使用されましたが、現在では、原則として製造等が禁止されています。
    石綿は、そこにあること自体が直ちに問題なのではなく、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、各種法律などで予防や飛散防止等が図られています。
  • (2)建築物においては、①耐火被覆等として吹き付けアスベストが、②屋根材、壁材、天井材等としてアスベストを含んだセメント等を板状に固めたスレートボード等が使用されている可能性があります。
    露出して吹き付けアスベストが使用されている場合、劣化等によりその繊維が飛散するおそれがありますが、板状に固めたスレートボードや天井裏・壁の内部にある吹き付けアスベストからは、通常の使用状態では室内に繊維が飛散する可能性は低いと考えられます。
    吹き付けアスベストは、戸建住宅では、通常、使用されていませんが、マンション等では駐車場などに、また、比較的規模の大きい鉄骨造の建築物(事務所、店舗、倉庫等)では、耐火被覆として使用されている可能性があります。
    アスベスト含有率1%を超えるものは概ね昭和62年頃に製造中止となっており、法的に平成7年に原則使用禁止となっております。

ポリ塩化ビフェニル(PCB)とはどのようなものですか?

  • (1)PCBはポリ塩化ビフェニル化合物の総称であり、その分子に保有する塩素の数やその位置の違いにより209種類の異性体が存在します。
    熱で分解しにくい、不燃性、電気絶縁性が高いなど、化学的に安定な性質を有することから、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙などさまざまな用途で利用されてきましたが、現在は製造・輸入ともに禁止されています。
    PCBが使用される代表的な電気機器には、高圧トランスや高圧コンデンサー、安定器があります。
    脂肪に溶けやすいという性質から、慢性的な摂取により体内に徐々に蓄積し、様々な中毒症状を引き起こすことが報告されています。
  • (2)PCB廃棄物を保管している事業者は、毎年度、そのPCB廃棄物の保管及び処分の状況に関して都道府県知事(政令で定める市にあっては市長)に届け出なければなりません。
    なお、都道府県知事等は、上記保管等の届出書について、PCB廃棄物の保管及び処分の状況を一般に公表することとなっています。
    また、何人も、PCB廃棄物を譲り渡し又は譲り受けてはいけません。
  • (3)PCB廃棄物は、定められた期限までに処理しなければなりません。
    昭和50年以降、新規のPCB使用機器の製造が完全に中止されています。
    詳細は、環境省のホームページで見ることができるようになっておりますのでご参照ください。
    http://www.env.go.jp/recycle/poly/index.html

災害防止のための規制にはどのようなものがありますか?

災害を防止するための規制には、次のような各法律があります。

  • (1)急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律による規制
    がけ崩れの危険性や、誘発助長するおそれがある区域を都道府県知事は、急傾斜地崩壊危険区域に指定します。この区域内で、水の放流や切土・掘削・盛土等をする場合には、許可が必要です。
  • (2)地すべり等防止法による規制
    地すべりの危険がある区域を地すべり防止区域に、また、ぼた山のあるところを、ぼた山崩壊防止区域に指定します。区域内で一定の行為をするときは、都道府県知事の許可が必要です。
  • (3)砂防法
    砂防法により、砂防施設を設置したり、土砂災害を起こす行為を制限する区域を、砂防指定地に指定します。
    区域内の行為規制は、都道府県の条例に委ねられますが、おおむね地すべり等防止法や急傾斜地法に類似する規制を行います。
    なお、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」と「地すべり等防止法」に「砂防法」を加えた三つの法律を総称して、「土砂三法」といいます。
  • (4)土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(土砂災害防止法)による規制
    都道府県知事は、急傾斜地の崩壊・土石流・地滑りなどの土砂災害のおそれのある区域を、土砂災害警戒区域に指定し、さらにその区域のうち、土砂災害により著しい危害が生じるおそれのがる区域を、土砂災害特別警戒区域に指定します。
    特別警戒区域では、宅地分譲や社会福祉施設・医療施設などの建築を行うための開発行為に対する規制が行われます。また、居室のある建物については、土砂災害に対応できる構造にするように規制されます。

早期売却を前提とした価格(早期売却価格)とはどのような価格を言うのですか?

鑑定評価において求める通常の時価は、「現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場(不動産鑑定評価基準第5章)」を前提とした価格であり、この価格を「正常価格」といいます。
しかし、債務者が倒産した場合等には、直ちに不動産を処分し、事業の清算を検討することが考えられるため、この場合、早期の処分可能性を考慮した価格(いわゆる早期売却価格)を求めることが必要になります。すなわち、早期売却価格は、直ちに売却する場合の価格であるため、その分安くなります。

実務上、早期売却価格は、通常の方法で正常価格を求め、次に早期売却に伴う減価を行って求めるのが一般的です。
 早期売却価格 = 正常価格(時価) × 早期売却に伴う減価

「地積規模の大きな宅地の評価」とはどのようなものですか?

平成29年9月の財産評価基本通達の一部改正により、「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されました。これにより、平成30年1月1日以後に発生した相続、遺贈又は贈与に関して「地積規模の大きな宅地の評価」が適用され、従来の「広大地の評価」は、広大地に該当するか否かの判断が難しいため廃止されました。

≪算式≫
評価額 = 路線価 × 奥行価格
補正率
× 不整形地補正率など
の各種画地補正率
× 規模格差
補正率
× 地積
  • (1)地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏500㎡以上、それ以外の地域1,000㎡以上
  • (2)「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となるのは、「普通商業・併用住宅地区」と「普通住宅地区」
  • (3)次のいずれかに該当する宅地は除かれる。
    • ア 市街化調整区域に所在する宅地
    • イ 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている宅地
    • ウ 指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の宅地
    • エ 評価通達22-2に定める大規模工場用地

適用要件が明確化されたため、運用が簡単になると思います。

固定資産の減損会計とはどのようなものですか?

固定資産の収益性が低下し、投資額の回収が見込めなくなった場合には、その固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額する会計処理を行います。

減損会計の手順

  • (1)資産のグルーピング
  • (2)減損の兆候の把握
    例 市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落
  • (3)減損損失の認識
    帳簿価額 > 割引前将来キャッシュフローの総額
  • (4)減損損失の測定
    帳簿価額 - 回収可能価額 ※ = 減損損失
    ※回収可能価額 → 「正味売却価額」と「使用価値」のいずれか大きい額

正味売却価額等の査定には、主として鑑定評価が必要となります。

定期借地権とはどのようなものですか?

定期借地権には、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3種類があります。

  • (1)一般定期借地権
    • ① 存続期間 50年以上
    • ② 利用目的 制限なし
    • ③ 契約方法 公正証書等の書面で行う
    • ④ 契約終了時の建物 原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する。
  • (2)事業用定期借地権
    • ① 存続期間 10年以上50年未満
    • ② 利用目的 事業用建物所有に限る
    • ③ 契約方法 公正証書による設定契約をする
    • ④ 契約終了時の建物 原則として借地人は建物を取り壊して土地を返還する
  • (3)建物譲渡特約付借地権
    • ① 存続期間 30年以上
    • ② 利用目的 用途制限なし
    • ③ 契約方法 制約なし、口頭でも可
    • ④ 契約終了時の建物
      • ア 建物買取請求権がある
      • イ 建物は収去せず土地を返還する
      • ウ 借地人または借家人は継続して借家として住むことができる